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【脱毛メンズ】ツルツルになって失ったもの。【デメリット】

小説
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📘序章

「正直、後悔してるんだ」

そう言ったのは、いつもどおり穏やかな顔をしたツルオだった。
窓際の席。夕方の光が彼のカップの影をテーブルに伸ばしていた。

「え?」
僕――ハリオは思わず聞き返した。

彼は笑った。いつものように、ちょっと照れたように。
だけどその目には、どこか、置き忘れてきた感情みたいなものが滲んでいた。

「ヒゲ脱毛、やったじゃん、俺。ツルツルにしたの。完全に。
あれさ……なんか、自分じゃなくなった感じ、したんだよね」

言葉を探しながら、ツルオはコーヒーに目を落とす。

「清潔感? たしかにある。朝ラク? 間違いない。
でもさ……なんていうか、“俺っぽさ”みたいなのが……なくなった感じがしてさ」

僕は黙ってうなずいた。
ツルオは、ただヒゲを剃っただけじゃない。
彼は、自分の一部を、どこかに置いてきたのかもしれない。

🧩 第1章

「それでも、始めた理由があった」

「正直なところ、“周りの目”だったと思う」
ツルオは、静かにそう言った。

「職場の後輩がさ、めっちゃ肌ツルツルで。いつも清潔感あって、営業でもウケいいんだよ。
それ見てるうちに、“あれ? ヒゲって邪魔じゃね?”って思うようになった」

彼はコーヒーをひとくち啜りながら、言葉を続けた。

「SNSとかYouTubeでも、“ヒゲ脱毛しました!”って動画が増えてきてさ。
“ヒゲいらないよ派”が世の中の主流みたいな空気あるじゃん?
なんか……焦ったんだよね。置いてかれそうで」


僕は、ツルオのヒゲをそこまで気にしたことがなかった。
彼は元からきれい好きだったし、ヒゲだってきっちり整えていた。
でも、彼自身が“自分の顔”を許せなくなったのかもしれない。

「見た目を良くするって、いいことのはずなのにさ。
始めたときから、なんか変なモヤモヤがあったんだよね」


それでも、彼はカウンセリングを予約し、
スケジュールを立て、照射の予約を入れた。
「やらない後悔より、やって後悔」のつもりだったのかもしれない。


今となっては思う。
美しくなることと、らしくなくなることって、紙一重なのかもしれない。

🪞 第2章

「ツルツルになった顔に、自分が映らなかった」

「3回目くらいから、けっこう効果出てきたんだよ」
ツルオはそう言って、指で頬をなぞるような仕草をした。

「顎の下がまず減ってきて、鼻下もポツポツ抜けてさ。
で、5回終わった頃には、ほとんどヒゲって呼べるものが残ってなかった」

それは、成功のはずだった。
実際、カミソリを使うこともほとんどなくなったし、肌荒れも治った。

「でも……なんかね。朝、鏡見て、“誰だこいつ”って思った」


僕は思わず笑いそうになったが、やめた。
ツルオの表情は真剣だった。
ほんの少しだけ、笑っていたけど、それは皮肉を含んだ“気づきの笑い”だった。

「今まで、ヒゲってめんどくさいと思ってたけど、
実は“自分の輪郭”の一部だったんだなって」


彼の顔は、清潔感に満ちていた。
でもその分、“彼らしさ”が削ぎ落とされたようにも見えた。

「俺、ちょっとワイルド系だと思ってたんだよな、勝手に。
でもそれって、ヒゲがそう見せてただけかもしれなくてさ。
なくなったら、急に“普通の人”になった感じがして……なんか、味がなくなったというか……」


自己肯定感って、顔のどこかに住んでるのかもしれない。
それを削ったとき、人は思ってもみなかった場所に“空白”を感じる。

それが、ツルツルになった顔に映った“違和感”だった。

🪞 第3章

「自信と引き換えに、何かを失った気がした」

「会社では、けっこう褒められたよ」

ツルオは少し照れたように言った。

「“あれ?ツルオさん、なんか雰囲気変わりました?”とか、
“肌きれいですね!”って。営業先でも、“若返りました?”なんて言われたりしてさ」

それは嬉しかった、と彼は言う。
実際、少し自信もついた、とも。


「でも、なんか、心が置いてきぼりになった感じがしたんだよね」

僕は言葉に詰まった。
ツルオが語る“置いてきぼり”の正体が、なんとなく分かる気がしたから。

「外からの評価って、すごく強いよね。
“良くなった”って言われると、“そうなんだ”って思う。
でも、内側の声は、“本当にそうか?”って問いかけてくる」


彼は少し笑って、テーブルに目を落とした。

「鏡の中にいる自分は、自信がある顔をしてる。
でも、その奥で――ほんの少し、居心地の悪そうな自分がいるんだよ」


脱毛は成功だった。
でも、“ツルツルになった顔”と“元の自分”のあいだには、
微妙なズレが生まれていた。

それは、誰にも見えないズレ。
でも、本人にだけは、はっきりと分かるズレだった。

🗣 第4章

「それって、本当に必要だった?」

「でさ、ハリオはどう思う?」
ツルオがそう尋ねたのは、唐突だった。

「俺の顔、変わったと思う?」

僕は少しだけ考えてから、うなずいた。

「変わったと思う。印象は、たしかに前より“すっきり”した」
「でも……なんか、ツルオらしさが、少し減ったようにも感じた」

正直に言った。遠慮しても、意味がないと思った。


ツルオは、特に驚きもせず、ふっと息を吐いた。

「そうだよな。俺も、自分を見て、そう思うことあるんだよ。
“悪くないんだけど、なんか……”っていう、あの感覚」


しばらく沈黙が流れた。
喫茶店の中は、落ち着いたジャズが静かに流れていた。

「脱毛って、“したほうがいい”って思わせる情報が多すぎてさ」
「“しないと損”とか、“清潔感が命”とか。
気がついたら、選択じゃなくて、“義務”みたいになってた気がする」


僕は、彼の言葉に強くうなずいた。

「それって、本当に“自分が望んだこと”だったのかなって、思うときある」
「必要だったか?って聞かれると、即答できない自分がいる」


選択肢があるはずなのに、
世の中の空気が、一方を正解にしてしまう。

脱毛はその象徴だったのかもしれない。

🌤 第5章

「ツルツルになった僕を、ようやく受け入れはじめた」

それからしばらくして――
僕とツルオは、また同じ喫茶店で顔を合わせた。

「最近、どう?」と聞くと、彼は少し笑った。

「まあ……だいぶ慣れてきたよ。
“これが今の俺なんだな”って、ようやく思えるようになってきた」


最初のころの違和感は、まだ完全に消えたわけじゃない。
だけど、彼の表情には、前よりも自然な自信が宿っていた。

「ヒゲがない顔に、ようやく“自分”が馴染んできたっていうか」
「時間がかかったけど……でも、今は悪くないと思える」


僕はそれを聞いて、少し安心した。
ツルオの選択が、たとえ迷いながらのものだったとしても、
今の彼が“自分を受け入れはじめた”ことが何より大切だと思えた。


「ねえ、ハリオ」
ツルオは、少しだけ恥ずかしそうに続けた。

「もし、“ヒゲが似合う自分”が恋しくなったらさ……描いちゃえばいいのかな」
「アイブロウで(笑)」

僕は吹き出した。
彼も笑った。


僕たちは変わっていく。
見た目も、気持ちも、周囲の評価も。
でも、“自分を好きでいようとする気持ち”だけは、変えずに持っていたい。


そしてときどき、思い出せばいい。

ツルツルになった彼が、少しだけ戸惑いながらも、
新しい自分と向き合っていたあの午後のことを。


あとがき

ヒゲ脱毛は、たしかに便利で、清潔感も得られる選択肢です。
ただ、それが“万人にとって正解”かというと、実はそうでもありません。

今回の物語では、脱毛後の後悔や、想定外だった“自分らしさの喪失”を描きました。
これは決して大げさな話ではなく、「脱毛 メンズ デメリット」という検索でたどり着いた多くの人が、感じているリアルです。

脱毛をする・しないは自由です。
でもその前に、「それって本当に、自分に必要なものなのか?」と立ち止まる時間が、あとになって大きな意味を持つかもしれません。

あなたが納得して選べるよう、この記事が少しでもヒントになれば嬉しいです。